独立行政法人 国立病院機構 村山医療センター

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APS療法(次世代PRP)について


当院では、令和6年1月から変形性関節症に対する再生医療の一つであるAPS療法(次世代PRP療法)を開始します。

(1)変形性関節症とは?
関節の軟骨が減って、痛みや変形、動きの悪さを生じる疾患です。あらゆる関節が変形をきたす可能性がありますが、とくに膝関節や股関節のような荷重がかかる関節の変形は歩行時の痛みの原因となり、歩くのが困難になるなど生活に支障をきたします。

(2)再生医療とは これまで、変形性関節症に対する治療は、 ① 保存加療: 痛み止めの内服薬や湿布などの投薬加療、ヒアルロン酸注射などの関節内注射、筋力強化訓練や可動域訓練などの運動療法や物理療法など。
② 手術加療: 鏡視下手術、骨切り手術、人工関節置換術などが行われてきました。

再生医療とは、ケガや病気で機能を失った組織を修復したり再生したりする治療の事です。再生医療は近年、保存療法や手術療法といった従来の治療法に加えて、PRP療法を含めた再生医療が第3の新たな治療の選択肢として患者さんに提供することが可能となってます。

(3)PRP療法とは?
PRP(Platelet-Rich Plasma:多血小板血漿)療法とは、患者さんの血液から血小板を濃縮して、血小板に含まれる活性の高い成長因子などを膝関節など患部に直接注入する治療法です。
血小板から放出される成長因子は、傷んだ組織の修復を促す効果があり。変形による痛みの抑制に加えて軟骨の保護効果も期待できるのが、PRP療法の利点でる。
これまでには難治性皮膚潰瘍や褥瘡などの皮膚科や口腔・歯科領域で使用されていた治療法ですが、 近年では整形外科領域でも活用されています。
一般的には、1週間~6か月で組織の修復が始まり、投与開始後2週間~3か月までに効果が期待できると言われております。

(4)APS療法とは?
APS(Autologous Protein Solution:自己たんぱく質溶液)療法とは、次世代PRPとも呼ばれており、PRPをさらに遠心分離、加工することで、炎症を抑える抗炎症性サイトカインと、軟骨を保護する成長因子を高濃度に抽出したものです。PRPよりさらに炎症の軽減や軟骨破壊の抑制の効果が期待できます。
一般的には、1週間~4週間程度で組織の修復が始まり、投与開始後2週間~3か月くらいで効果が期待できると言われております。APS1回投与で最大24か月効果が続くとの報告もあります。ただし、治療効果には個人差があります。

変形性関節症における再生医療

APS療法の流れは?

(1) 外来での診察、検査
一般的な整形外科の診察、画像診断等を行い、変形性関節症の診断をされた患者様が対象です。投薬や治療他の保存療法で症状改善があまり見られない患者様の中で、診察や画像診断上、APS療法の適応で、なおかつ患者様本人が希望された場合、患者様に治療の説明と同意をいただき、治療日を決定します。

(2) 治療当日
① 患者様ご自身の血液を使用するため、まず採血(約55ml)を行います。
② 採血した血液を遠心分離(2回)行い、APSを調整します。
③ 調整されたAPSを患部へ注入します。
所要時間は約1時間で、注射後はそのままご帰宅できます。治療当日は飲酒や過度な運動などはお控えください。

(3) 治療後
外来にて治療効果の確認や副作用の有無をチェックするために、定期的に受診していただきます。

APS療法の流れ

APS療法の長所と短所について

(4) 長所は?
・APS療法は、患者様ご自身の血液を採取して使用するため、副作用のリスクが低く、安全性は高いといわれております。
・APS療法は変形性関節症の治療において、従来の保存療法から手術治療をつなぐ第3の治療法として新たな選択肢を患者に提供することが可能です。手術のリスクや回復期間を避けることができます。
・APS療法は、変形性関節症による痛みや腫れなどの症状を軽減することができ、軟骨組織の損傷を修復したり、機能を改善したりする効果が期待できます。

(5) 短所は?
・APS療法は、患者様の症状の程度によって効果にばらつきがあり、劇的な改善が期待できる一方、あまり効果が見られない場合もあります。この治療によって確実な効果を保証するものではありません。また、長期的な効果については、まだ十分に解明されていない部分があります。
・日本では現時点では保険診療の適応外となっておりますので、自費診療となります。

再生医療に興味がある患者様へ

現在、APS療法はじめ、様々な再生医療が行われております。どの治療も、痛みや症状がすべて100%なくなるような夢のような治療までは至っていないのが現状です。ただ、適応をしっかり見極めれば、従来の投薬や注射などの保存療法で改善が乏しかった症状が、APS療法によって改善する可能性は十分あります。
再生医療やAPS療法に興味を持っていらっしゃる患者様は、適切な情報を得て医師との相談を通じて最適な治療選択を検討することが重要です。
変形性関節症に対してこれまで保存療法を色々やってみたけれど、症状が改善しない患者様で、まだ手術療法までは考えたくないという方は、一度当院の関節専門の医師に遠慮なくご相談ください。


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