独立行政法人 国立病院機構 村山医療センター

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整形外科

頚椎後縦靭帯骨化症について
Ossification of posterior longitudinal ligament of the cervical spine

診断のポイントと治療、紹介のタイミング

村山医療センター 
脊髄損傷病棟 医長
藤吉 兼浩


 後縦靭帯骨化症(ossification of posterior longitudinal ligament : OPLL)は脊柱管内の後縦靭帯に骨化を生じる疾患です。

頚椎後縦靭帯骨化症

 本邦での発生頻度が多いことから1975年に厚生省の脊柱靭帯骨化症調査研究班が発足し、多くの報告がなされています。わが国での発生率は3%前後と高いのに対し、その発生原因と自然経過は明らかでなく重症例では四肢麻痺を呈することがあるため、疾患に対する正しい知識と理解が必要です。男性における発生頻度が高く、発症は中年以降、50歳前後で発症することが多いといわれています。
原因は現在のところ不明であり、なんらかの遺伝的関与があると考えられています。糖尿病や代謝異常、成長ホルモンはOPLLの発生に関与している可能性があるとされています。
単純X線検査、CTで靭帯の骨化を認めれば頚椎OPLLと診断されます。また、MRIによって脊髄の圧迫の程度を評価することもできます。

頚椎後縦靭帯骨化症

 脊髄症状(四肢のしびれや痛み、手の巧緻運動障害、歩行障害、膀胱直腸障害など)が一度出現すると進行性のことが多く、重症例においては脊髄の圧迫による四肢麻痺を呈することがあります。したがって、比較的軽微な症状であっても、定期的に外来で診察すべきです。外傷歴を有する症例(転倒して頭をぶつけるなど)では手術の治療成績が悪いという報告は多く、患者さんに過度の不安を与えないという前提のもと、転倒や頭部外傷に注意するよう指導する必要があります。

頚椎後縦靭帯骨化症


治療

 疼痛が主症状の神経根症の場合や、軽度の脊髄症状の場合は保存療法が選択されます。保存療法としては、消炎鎮痛剤、筋弛緩剤等を内服して自覚症状を軽減する薬物療法や、頚椎の運動を制限し動的因子を排除する目的で装具や牽引、ハロー固定等が行われますが、その効果に関しては一定の見解はありません。頚椎装具により一時的に症状の改善を認めるものの約50~60%の症例が結果として手術に移行したとの報告もあります。脊髄症を認めれば保存療法の限界と考えられ、手術が望ましいと考えられます。また脊髄症状を認めない場合でも長期的には手術が必要になる可能性が高いことを認識すべきです。


手術療法

 保存療法によっても軽快しない症例、進行する脊髄症状を呈する症例に対しては手術療法が必要です。保存療法の限界や手術のタイミングは意見が分かれますが、早期の手術が望ましい症例が存在することは明らかです。個々の症例に対して慎重な対応が必要であると考えられます。


手術方法

 手術の方法には、前方法と後方法があります。前方法は骨化巣切除術や骨化浮動術などの前方除圧固定術と、動的因子のみを制御するための前方固定に分けられます。4椎体以上に及ぶような広範囲の骨化に対しては、前方法は適応されないことが多いです。後方法は、後方から椎弓切除や椎弓形成を行う方法であり、一般的に広く行われている方法です。どちらの術式を選択するかは、骨化の範囲、占拠率、形態、後弯の程度などから慎重に選択するべきです。当院では正中縦割による椎弓形成術やskip laminoplastyにTEMPL法を組み合わせた低侵襲手術法も行われています。

頚椎後縦靭帯骨化症


外科的治療の効果について

 手術による臨床症状、神経症状の改善に伴って、ある程度のquality of life(QOL)の向上が見込まれます。しかし重症例では症状の改善が十分でなく、職業復帰を断念せざるを得ない場合もあります。


おわりに

 頚椎OPLLはいわゆる“不治の病”ではありません。頚椎のレントゲンやCTにて靭帯の骨化を認めた場合は、患者に過度の不安を与えないよう配慮しつつ、頭部外傷に気をつけるよう指導することと、症状が軽微であっても専門医へ紹介することが重要です。

頚椎OPLLは、日常生活に支障をきたすような運動障害を生じた場合には難病医療費等助成事業の対象になります。

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