独立行政法人 国立病院機構 村山医療センター

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スタッフに聞く

世界一の下で学びたい ニューヨークにて


八木 満 (やぎ みつる)
村山医療センター 整形外科 医長


yagi 治療を受けると言うことは、医師に身体を預けること。病院選びには、期待と同じ位不安もつきものです。医師の技術だけではなくその人間性も気になってしまいます。

そんな疑問を持ちながら、八木医長のお話をうかがいました。


脊椎外科医ならば誰でもできる手術ではない

聞き手:先生のご専門は脊柱変形と聞いております。側弯症についてお聞きしたいのですが。

八木:側弯症とは脊椎(せぼね)が回旋を伴って正面から見て10度以上左右にまがっている状態を指します。ひとくちに側弯症といってもお子さんから大人までたくさんの原因があり、またその程度も多種多様です。大多数原因がわからない病気です。

yagi 聞き手:側弯症の手術は、脊椎外科医であれば、誰でもできる手術ではないと聞いています。

八木:骨全体が曲がってしまいますので、大きな手術になる場合が多いです。特に変形の強い患者さんは、難しい手術となる場合があります。

ですから、専門の医師のいる病院で適切な診断、治療を受けることがとても大切です。

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挑戦は世界一の下で

聞き手:先生は外科医として脊柱変形の技術をどのように学ばれたのですか?

八木:脊椎外科の指導医になった後、やるならば、世界一の医師の下で腕を磨きたい。世界一の下で自分自身を試してみたい。そのような気持ちから脊椎変形では世界一手術がうまいといわれる米国ニューヨークHospital for Special Surgeryのボアチ先生に師事しました。

聞き手:簡単に世界一の権威が受け入れてくれるものでしょうか。

八木:受け入れは厳しいとは聞いていましたが、まずボアチ先生に手紙を書くところからはじめました。ボアチ先生はアフリカ生まれのガーナ人です。貧困や人種差別と戦いながら、今の地位を築いた苦労人です。私が日本人であるということに偏見がないこともプラスだったかもしれませんね。

聞き手:とは言っても、世界一の先生ならば師事したいと願う医師も多いでしょう。ボアチ先生は、八木先生の熱意を感じたのかもしれませんね。


命を守る仕組みを創る

yagi 聞き手:世界一の先生に師事できたということは、学ぶことが多かったのでしょうね。

八木:ボアチ先生は、医師としても技量はもちろんですが、人間的魅力にあふれる人格者でした。

聞き手:それはどのような点でしょうか。

八木:ボアチ先生の出身国のアフリカ ガーナでは、側弯症で命を落とす子供たちがいます。ボアチ先生は、私財と投じ、寄付金を集め、財団FOCOSを創りました。目的は、アフリカ諸国の子供たちの命を守るために手術をすること、アフリカで脊椎外科医を育てることです。

聞き手:患者さんの手術をするだけではなく、患者さんの命を守る仕組みを創られたわけですね。

八木:その通りです。ボアチ先生の私利私欲のない考えに、世界中から脊柱変形の第一人者が集まり、年間100例近い手術を行い、外来診療も行っています。私もFOCOSのメンバーですから、毎年アフリカで子どもたちのために側弯症の手術を行っています。

ボアチ先生(Dr. Oheneba Boachie-Adje )

ガーナ生まれ、20歳のときに全財産わずか200ドルをにぎりしめアメリカ、ニューヨークに留学。
コーネル大学医学部整形外科教授。
1998年から自身の資産でアフリカの重度側弯症や結核性脊柱変形の子どもたちのために財団を設立。毎年2回30から50人のチームを結成しボランティアでアフリカでの医療活動を行っている。ディスカバリーチャンネルのドキュメンタリー”Surgery Saved My Life”で紹介される。


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