独立行政法人 国立病院機構 村山医療センター

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スタッフに聞く

祝! 脊髄損傷研究分野での快挙!!!


村山医療センター 医局秘書
アルーナ


病院食村山医療センターの藤吉兼弘先生(整形外科・脊椎)の研究が世の中に認められました。

藤吉先生は慶應義塾大学の大学院の時から脊髄再生の研究に携わってきました。村山医療センターに赴任してからは、手術に外来や病棟を駆け回って臨床の仕事をされてきました。その忙しい仕事の間をぬって基礎研究と論文作成に心血をそそぎ、今回の快挙となったのです。

藤吉先生にインタビューしてみました。


脳脊髄の髄鞘再生をMRIで可視化することに成功

アルーナ:
簡単に教えてください。 どういうことが今回の研究の快挙なのでしょうか。

藤吉:
中枢神経は電線に例えることができます。電気が流れる導線を軸索、導線に巻かれているゴムの鞘を髄鞘といいます。

病院食今回、われわれは世界で初めて髄鞘を可視化すること(見ること)に成功しました。髄鞘は生まれた時にはまだ未完成であり、成人になるまで発達し続けます。髄鞘が正常に発達しなかったり(髄鞘形成不全)、壊れたりする(脱髄)と様々な症状を呈します。脊髄損傷においても脱髄が起こることが知られています。さらにわれわれは動物における研究で、損傷してしまった脊髄に対してiPS細胞を移植すると、髄鞘が再生すること(再髄鞘化)が分かっています。しかしこれまでは生体内の髄鞘をみる方法が存在しなかったのです。

今回、私の発明したMRIを用いたミエリンマップ法により脱髄も再髄鞘化も生体内で評価することが可能となりました。本法により脊髄損傷だけでなく、様々な神経疾患の病態の解明と治療法の開発が進むこと、さらには再生医療が加速することが期待されます。現在病気やケガと戦っている患者さんたちにとって希望のひかりが差し込むことになると信じてやみません。くわしくは慶應義塾の報道発表をご覧ください。
http://www.keio.ac.jp/ja/press_release/2015/osa3qr000001eldf.html
髄鞘

アルーナ:
患者さんにとって今度どのような展開が考えられますか?

藤吉:
MRIを用いて脳脊髄の髄鞘(注1)の再生を可視化することなのですが、本邦で約2万人が患う多発性硬化症(注2)は、脳脊髄の正常な機能に欠かせない髄鞘が崩壊と再生を繰り返す神経難病であることで知られていますが、既存の技術ではその再生を可視化することは困難でした。

すでに多くの病院に設置されているMRIを用いて約10分程度の短時間で撮影可能であり、患者への負担は極めて低いものです。今後、多発性硬化症などの神経難病の診療や、脊髄損傷に対する神経再生医療の実現化に大きく寄与するものと期待しています。

アルーナ:
脳脊髄の髄鞘(注1)と多発性硬化症(注2)について詳しく教えて下さい。

藤吉:
髄鞘(注1)は、神経軸索を包む脂肪分に富んだ構造物で、脳脊髄ではオリゴデンドロサイトと呼ばれる細胞が形成しています。髄鞘による神経伝導速度の加速化は、ヒトを含む高等動物の神経機能には必須です。髄鞘形成は主に幼少期に生じ、様々な神経機能の成長発達に関連していますが、逆に髄鞘の障害は神経機能に異常を来す原因となります。最近では脳梗塞、脊髄損傷、アルツハイマー病などの認知 3/4 症疾患、筋萎縮性側索硬化症などの神経変性疾患、統合失調症などの精神疾患においても髄鞘障害の関与が指摘されています。

(注2)多発性硬化症 多発性硬化症は原因不明の神経難病で、髄鞘の崩壊(脱髄)と再生(再髄鞘化)が繰り返す疾病です。世界で約250万人、本邦で約2万人が本症を患っており、わが国の難病法の指定疾患になっています。主に20歳代から30歳代の若年女性に好発し、無治療では一般に40歳代で歩行困難となり、平均寿命が約10年短くなることが知られています。根本的治療法はありませんが、進行を抑える治療薬が複数種類開発されており、最近では髄鞘の再生を促す治療薬の開発が進められています。

記者会見を欠席しちゃいました 

入院 食事先日慶應義塾大学にて藤吉先生の指導者である中村雅也教授と岡野教授がプレスリリース、記者会見が行われました。

もちろんこれは本当に名誉なことであります。本来であれば、その記者会見には藤吉先生も列席すべきところですが、藤吉先生は村山で患者さんの治療を優先し、手術を行っていたため欠席しちゃいました。なんかかっこいいですね。


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