独立行政法人 国立病院機構 村山医療センター

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トピック

最先端医療で低侵襲手術を! トップクラスの脊椎脊髄の専門医(クリンタルより)


名医検索サイトクリンタルのインタビューから

 名医検索サイトクリンタルで当院の谷戸副院長がインタビューを受けました。低侵襲手術の取り組みだけではなく、骨・運動疾患の総合臨床施設として成長する村山医療センターが紹介されています。

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整形外科をご専門とされるようになったきっかけについて教えてください

谷戸先生のインタビュー幼い頃より細かい作業は好きであり、医学の道に進んだ時に手術という方法で患者さんのためになれたらと思い、外科医になることを決めました。また、動かない手が動くようになる、歩けない人が歩けるようになる等と治療の成績が目でも明らかに分かるというところにも整形外科の魅力を感じました。 

 

整形外科の中でも脊椎脊髄手術に力を入れられていますが、ご専門にされたターニングポイントはありますか

脊椎脊髄疾患を極めることに決めたのは、大学時代の先輩との関りが、今振り返ってみるとターニングポイントだったと思います。その先輩はスキー中に事故にあい、首から下が動かなくなる頸髄損傷と診断されました。私は当時まだ大学1年生でしたが、目の前に食べ物があっても自分では食べられない、誰かの手を必要とする等といった状況に対し衝撃を受け、それと同時に一度悪くなってしまうと治すことができない神経疾患の怖さを感じました。そんな状況にある人達を何とかしたいという気持ちも高まり、脊椎脊髄疾患に興味を持ちました。 

村山医療センターは、国内外の大学の整形外科やその他の研究施設と比較してもトップレベルと言われていますが、村山医療センターの特徴について教えてください

谷戸先生のインタビュー村山医療センターの脊椎脊髄手術件数は、2015年度は711件、2016年度889件と年々増加傾向にあります。2017年度は脊椎脊髄手術は1000件を超えそうです。

その背景には、村山医療センターは昭和時代より脊椎脊髄疾患に強く、歴史のある病院であるということです。現在、脊椎脊髄を専門にする先生は13人いますが、国内で13人もの脊椎脊髄専門家が在籍する病院は少ないと思っております。手術症例はすべてカンファレンスで症例検討を行い、その患者さんにとってベストな治療方法は何か相談します。専門を志す医師が13人集まれば、毎日行われるカンファレンスは学会と並ぶくらいの意見交換の場になります。ベテランの医師も若い医師も意見を出し合い、日々スキルアップを図っています。

また、手術室にはナビゲーションシステム、2台の32ch神経刺激装置、手術用顕微鏡などの最先端医療機器をそろえており、難しい手術でも患者さんにとって安全に行えるような環境を整えているのも魅力の一つだと思います。新しい事も取り入れ、今までの歴史に裏付けて評価もしながら、ひとりひとりの医師が患者さんと向き合うことを大切にしています。

最先端医療としてSkip laminoplasty(スキップ・ラミノプラスティ)を導入されて頚椎手術も年々増加傾向であると聞きました。頚椎症性脊髄症について教えていただいてもよろしいですか?

谷戸先生のインタビュー頸椎症性脊髄症とは、頚椎で脊髄が圧迫される疾患です。上肢(肩や上腕、前腕、手指など)の痛みやしびれが出現し、箸が持てない、文字が書けない等の症状をはじめ、歩行障害や膀胱直腸障害も発生します。このような症状が進行してしまうと、例え手術をしても、もとのように生活をするのは難しくなってしまいます。患者さんの病状に応じて保存的に経過を追うこともありますが、判断の上で進行が予想される場合、早期に手術をすることをお勧めします。

頸椎疾患の従来の手術は直接術野を観察する必要があり、傷口も大きく、筋肉を剥がす範囲も大きくなるので、痛みや出血といった合併症をそれなりに伴うものでした。術後に首の動かしにくさや変形を引き起こし社会復帰にも時間がかかりました。しかし当院で行っているSkip laminoplastyは手術用顕微鏡を用いて行いますので、出血も少なく筋肉を傷める範囲を最小限にできます。このような術式を低侵襲手術と呼び、術後の痛みを抑え、術後早期回復を期待できます。実際、デスクワークを仕事とする患者さんなら、術後に仕事復帰できるのは約2週間後です。

しかし、この術式は従来の手術に比べ技術力を求められ、マスターするには一般的な整形外科を経験した先生でも2年はかかります。現在村山医療センターでは、この術式を多くの先生がマスターしています。もちろんすべての頸椎疾患に対してSkip laminoplastyが適応されるわけではありませんが、従来の手術方法よりもメリットが増え、適応できる患者さんの範囲も広がりました。  

腰部脊柱管狭窄症と診断されて、保存的治療で経過している患者さんも多いと思いますが、手術の適応について教えてください

腰部脊柱管狭窄は、加齢に伴い、骨が変形し腰椎部で神経が圧迫される疾患です。症状としては、間欠性跛行と言う「長い距離を歩きたくても、下肢にしびれや痛みを生じて歩けなくなる状態」や、歩行障害、つま先立ちや踵歩きが出来ない、頻尿や残尿感といった膀胱直腸障害が典型的な症状として挙げられます。このような状態がみられる場合には手術を考えます。

腰部脊柱管狭窄症の手術治療は大きく二つに分けられます。神経の圧迫だけであれば圧迫部を除去する椎弓切除術が適応されます。腰椎に不安定性があれば圧迫を除去するだけでなく、脊椎固定術が必要となります。

私は腰部脊柱管狭窄症の手術方法として顕微鏡を用いた片側侵入両側除圧術をおこなっています。 
脊椎の後方組織をすべてとりさってしまう椎弓切除術が主流なのに対し、片側侵入両側除圧術は脊椎の片側の筋肉を剥離して侵入し、片側から両側の神経組織の除圧を行いますので、従来の方法ではメスを入れる必要があった対側の筋肉や関節をまったく傷つけることがありません。それにより、手術後の傷口の痛みや合併症を抑える事にも繋がり、患者さんの手術に対する負担も軽減されます。

谷戸先生が患者さんを診察されるときに日頃心がけられていること、大切にされていることはございますか?

保存療法で良いか、手術療法が必要かどうかを見極めるために、患者さんと向かい合っていくことを大切にしています。腰痛やしびれは患者さん自身も分かりやすい症状ですが、神経の圧迫が膀胱直腸障害を起こすことを知らない患者さんも多いのが現実です。また、腰痛などの痛みはストレスや他の疾患から出る場合もあるので、患者さんの背景や病歴など総合的に診断することを大切にしています。  

腰や首の疾患をお持ちの患者さんへのメッセージをお願いいたします

腰や首の痛みで歩くのが嫌になり家に閉じこもることは、筋肉の低下や骨をさらに弱くする原因になります。痛みやしびれで手を動かしたり歩いたりするのが辛い場合は必ず専門医の診断を受けて欲しいです。

当院では地域との連携も大切にしています。地域の先生方に講演をしたことがありますが、それ以来、地域の先生の協力もあり村山医療センターのみならず広範囲の地域をカバーできるようになってきています。また、かかりつけがある場合は、紹介状とMRI画像結果などを一緒に持参して頂けると診断にさらに役立てられます。

村山医療センターは来年の秋には新病棟の建設や、冒頭でもお聞きしたように脊椎脊髄を専門とする先生も多く、患者さんからの注目はもちろん、整形外科医を志す先生方からもますます注目が高い病院となりそうですが、谷戸先生の今後の展望をお聞かせいただいてもよろしいでしょうか

谷戸先生のインタビューチーム医療を大切に、腰疾患だけや首疾患だけにならないよう、骨・運動疾患の総合臨床施設として成長を続ける病院にしていくことです。例えば、膝が痛いと受診された患者さんには、膝だけではなく、腰や股関節にも疾患がある場合もあり、根本的な部位を改善していないために手術をしても膝の痛みが治らない、かえって悪くなる場合もあります。そこをカバーするのがチーム医療で、毎日行われるカンファレンスでは脊椎班の先生のみならず、膝と股関節の専門医師も参加し、様々な目線から疾患をとらえる様にしています。

また、村山医療センターは脊椎脊髄の教育病院と考えております。大学病院の使命は医学生を一人前の医師に育て上げることです。村山医療センターは整形外科医師をトップクラスの脊椎脊髄の専門医に育てていくことが使命であると考えています。

その他にも当院は、脊髄損傷治療拠点として慶應義塾大学と連携をとりIPS細胞の脊髄疾患への応用、HALロボットスーツを用いたリハビリなど、最先端医療を取り入れていきます。将来に役立つ医療を提供できるように邁進していきたいと考えています。



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