独立行政法人 国立病院機構 村山医療センター

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整形外科

腰部脊柱管狭窄症とは2

村山医療センター 院長 谷戸祥之

前回は一般的な背骨の話から腰部脊柱管狭窄症の治療を説明させていただきました。
今回は当院での実際の手術の様子を報告させていただきます。後半には手術中の写真も掲載されますので注意が必要です。今回の記事は腰部脊柱管狭窄症に限らず、すべての手術に共通です。

当院では毎朝、整形外科医が集合しカンファレンスが行われます。主治医から患者さんの病状、治療経過の説明があり、全員で意見を出し、手術方法の確認が行われます。全員が納得しなければ手術は行われません。
現在は新型コロナ感染の有無を調べるため手術の2日前に入院としています(もちろん症状が重篤な場合は入院当日に緊急手術となります;尿閉、急速な筋力低下、激しい疼痛など)。

~手術前~

主治医の手術決定の後、外来看護師から入院についての説明があります。全身麻酔の場合、患者さんは麻酔外来にかかります。合併症の確認と麻酔の説明があります。循環器の異常など全身状態に問題があれば麻酔科から手術ストップが入ることもあります。人工関節の手術などでは歯科受診し虫歯の状況を確認します。身体のなかに人工物を入れる手術では感染に注意しなければいけないからです。未治療のひどい虫歯は感染を起こす危険性を上げる可能性が示唆されており、口腔ケアは重要です。
入院後、患者さんと家族に主治医から手術の説明があり、同意書が渡されます。手術室看護師が病棟に訪問し当日の流れについて説明します。

~手術日~

患者さんが手術室に入る前から準備が始まります。滅菌した機械を清潔操作(手で触らないように)で準備します。手術に使われる機械は多種多様です。

~入室~

予定時間もしくは前の手術が終了すると患者さんは呼ばれて病棟の看護師と手術室に向かいます。手術室の入り口で患者確認が行われます。主治医、病棟看護師、手術に立ち会う看護師(機械出し、外回り)で患者さんの名前、IDの確認を行います。また患者さんに本日手術する場所を言ってもらいます。手術のイメージは怖いかもしれませんが、看護師スタッフは熟練しており、皆が笑顔で患者さんを迎えます。過度な緊張は必要ありません。
病状によって歩いて入室する場合とベッドで入室する場合があります。

医師とともに手術に入り、医師にメス、ピンセットなどを渡す機械出しの看護師は先に手洗いを行います。これは手術前の準備で最も重要なもののひとつで我々は学生のうちから厳しく指導されます。ブラシと消毒液入りの石鹸で指先から肘の上までしっかり洗浄します。

滅菌された術着と手袋(二重です)を装着したあとは滅菌したもの以外には触れません。手術が終了するまでこのままです。手術は時には数時間に及びます。交代がいなければ食事もトイレも行けません。

患者さんの入室時に病棟の看護師から外回りの看護師に申し送りがあります。

手術室に入ると麻酔科の先生により酸素を投与されます。点滴から麻酔薬が入りますので患者さんはすぐに寝てしまいます。

~タイムアウト~

すべての準備が整い、患者さんの身体には滅菌した布がかけられ、術者、助手、機械出し看護師が配置につき、まさに手術が始まる直前に主治医から“タイムアウト”の声がかかります。
手術室の中にいるスタッフは皆が手を止めて主治医に注目します。主治医はこの手術の術式、注意点につき最後の確認に声を出して行います。手術中の患者さんの状態は麻酔科医と外回りの看護師により確認されます。

~加刃~手術終了へ~

ここからは腰部脊柱管狭窄症の手術です。皮膚を切開した後、筋肉を展開し開窓器により手術野が広げられます。

手術用顕微鏡で術野を拡大しエアードリルという高速で回転する機械 にて椎弓(脊柱管後方の骨)が削られていきます。ドリルの先端が球体で小さなツブツブがついていて安全に骨が削れます。十分に神経の除圧が確認された後、1000ml以上の滅菌水にて洗浄し、ドレーンが設置され皮膚が縫合されます。腰部脊柱管狭窄症の手術時間は1~2時間で術中出血は5~100mlです。このあと主治医から患者さんの家族に手術の結果を報告します。患者さんは麻酔が覚めた後、前室で少し休憩してから、麻酔科の許可が出たら病棟看護師が迎えにきて病室に帰ります。

いかがでしたか。少しは手術というものに対する理解が得られ、不安が少なくなれば幸いです。我々は何重もの確認を行うことで可能な限り安全性を追求していきます。


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