独立行政法人 国立病院機構 村山医療センター

042-561-1221
文字サイズ
  • 標準
  • 拡大
整形外科

腰椎椎間板ヘルニアについて

整形外科医長 小林 喜臣


椎間板ヘルニアは、背骨の骨と骨の間にある椎間板というクッションの役割を持つ軟骨組織が飛び出して神経を圧迫する病気です。 腰痛や下肢痛、しびれなどの症状を引き起こします。主に椎間板内の髄核が飛び出すことが多いです。

疫学

椎間板ヘルニアは、20~50歳の男性に最も多く発生します。男性の方が女性に比べ発症率が高いです。椎間板ヘルニアは、日本でも非常に多く見られる疾患で、年間約15万人が発症していると推定されています。

原因

椎間板ヘルニアの原因は、加齢、肥満、喫煙、重労働、遺伝などが考えられています。
加齢とともに椎間板は変性し、弾力性が失われていきます。 肥満は背骨(脊椎)への負担を増加させ、椎間板ヘルニアのリスクを高めます。喫煙は椎間板変性を誘発しヘルニアのリスクを高めます。そのほか、中腰での重労働は、腰椎に負担をかけ、椎間板ヘルニアのリスクを高めます。遺伝的要因も、椎間板ヘルニアの発症に関与していると考えられています。

症状

椎間板ヘルニアの症状は、飛び出した髄核が圧迫する神経の位置によって異なり、主に腰痛や下肢痛、しびれ、筋力低下、排尿障害などが起こります。 腰痛は、最も一般的な症状で、 下肢痛やしびれは、お尻から太もも、足にかけて広がリます。 筋力低下は、足に力が入りにくくなる症状です。 排尿障害は、頻尿になったり、尿意を感じにくい、尿が出にくいなどの症状が出ます。

診断

椎間板ヘルニアの診断は、問診、診察、画像検査、神経学的検査などを総合的に行います。 問診では、症状の現れ方、経過、仕事内容、生活習慣などを詳しく問診します。 診察では、腰椎の動きや圧痛、筋力などを検査し、神経学的検査では、下肢の反射や感覚などを検査します。画像検査には、X線、MRI、CTなどが有用で当院でも実施可能です。特にMRIは、椎間板や神経の状態を詳細に観察することができます。

治療

椎間板ヘルニアの治療法は、症状の程度や患者さんの状態によって異なります。 薬物療法や理学療法といった保存療法が一般的ですが、保存療法で改善しない場合や、筋力低下や排尿障害などが進行する場合、手術療法が必要になります。最近では保存療法でも疼痛が改善しない症例に対して椎間板内酵素注入療法が選択される場合もあります。

保存療法:薬物療法、理学療法、コルセットなどの装具療法などが中心です。 薬物療法では、痛み止めや炎症を抑える薬などが使用されます。 理学療法では、ストレッチや筋力トレーニングなどを行い、背骨や周辺の筋肉の緊張をほぐし、痛みを軽減します。 コルセットなどの装具療法では、腰椎を固定し、椎間板への負担を軽減します。

椎間板内酵素注入療法:椎間板内に酵素を含んだ薬剤(ヘルニコア)を注入し、椎板髄核内の保水成分を分解することでヘルニアを縮小します。結果として神経への圧迫が改善し、痛みや痺れなどの症状が軽減すると考えられています。

手術療法:保存療法で症状が改善しない場合や、排尿障害や筋力麻痺などの重篤な症状がある場合は、手術療法が検討されます。 当院では顕微鏡を使用した椎間板ヘルニア摘出術(Microscopic Discectomy)のほか、内視鏡下手術(UBE-D(Unilateral Biportal Endoscopic DiscectomyやMED(Micro Endoscopic Discectomy))も積極的に行なっております。

予防

椎間板ヘルニアは、再発しやすい疾患です。
予防のためには、適度な運動、禁煙、肥満防止、背骨に負担をかけないような姿勢を心がけることが大切です。


Copyright 2014 Murayama Medical Center ALL RIGHTS RESERVED.