独立行政法人 国立病院機構 村山医療センター

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整形外科

側弯症の早期発見・評価の重要性

整形外科 矢内 嘉英


椎骨というブロック状の骨が椎間板というクッションを挟むことで柱のように積み重なった構造を「脊柱」と呼びます。頸椎(首)は7個、胸椎(肋骨がついている胸の部分)は12個、腰椎(腰の部分)は5個あり、さらに仙椎や尾椎へとつながり脊柱が成り立っています。通常、脊柱は前後で見るとまっすぐ並んでいますが、側弯症では左右に曲がっており、かつ「ねじれ(回旋)」を伴っています。上下で最も傾いている2カ所の椎骨が成す角度をコブ角といいますが、コブ角が10°以上あるものを側弯症と定義しています。(図1)(10歳〜16歳で10°以上の側弯は2〜3%程度)一般的にコブ角が40〜50°以上では手術が必要と判断されますが(図2)、痛みなどの症状を出すことは稀です。そのため、指摘された頃には進行してしまっている場合もあります。

側弯症の原因として最も頻度が高いのは、「特発性」といって確たる原因がないものです。側弯症全体では80〜85%を占めています。その他、先天性(椎骨の形に生まれつき異常がある)、神経・筋原性、神経線維腫性(レックリングハウゼン病)、間葉系疾患(マルファン症候群、エーラス・ダンロス症候群など)などが原因になることがありますが、頻度としては稀です。特発性側弯症は、発症時期によって乳幼児期、学童期、思春期に分けられますが、思春期の女児が最も多いことも特徴です。

頻度の高い特発性側弯症に関しては、身長が伸びている時や二次性徴(初潮や声変わり)が落ちくまでの間は側弯が進行しやすい期間になります。年齢でいえば初潮前後の小学校4年生(10歳)から中学3年生(15歳)くらいの期間になります。そのため、発症時の年齢が低く、その後の成長期間が長いほど進行リスクは高いことになります。特に、10歳未満に発症した場合(早期発症)は、急速に進行する可能性があります。骨の成長が止まると、少なくとも急速に進行することはなくなります。その他の側弯症については、疾患により急速に進行するリスクが高いものもあります。

側弯症の診療で大切なことは、診断された段階で側弯症の程度を把握し、年齢や原因によりその後の進行リスクを判断した上で、定期的に観察し続けることです。進行リスクが少ないと判断できれば、患者さんに過度な心配を抱かせずに経過を見ることができますし、進行リスクが高いと判断できれば、注意喚起をしつつ経過を診ることができます。進行リスクが高いにも関わらず、当初の角度が小さいからといって通院をやめてしまったことで、数年の経過で急速進行してしまった例もありますので、最初の段階でのリスク評価がとても大切になります。側弯症の診察で難しい部分としては、先にも述べましたが、ある程度側弯が進行していても症状がないことが多いため、発見が遅くなってしまうことや、実際にいつから側弯が進んでいたかを把握することが困難なことです。

そこで重要なのは、早期に側弯症を発見することになります。現在は運動器学校検診の中の脊柱評価に、側弯症検診が組み込まれています。実際には保護者様がお子様の運動器観察を行った上で調査票に記入し、学校医による検診にて判定されます。「受診要」となれば整形外科専門医を受診し、必要に応じて治療を開始していくことになります。しかしながら、年に1回の学校検診があっても、その間に側弯が進行してしまうことも想定されます。いずれにしても、早期発見の入り口はご家庭にあると考えます。その際、側弯の有無をチェックする4つの方法があります。①前屈検査(お子様に両手を合わせて前屈していただき、背中や腰の左右差を見る)、②ウエストラインの左右差、③肩の高さの左右差、④肩甲骨の高さや突出の程度の左右差、を確認することです。(図3)是非、少なくとも小学校に上がるくらいの年齢になりましたら、このような観察を思い出した時にやっていただけると良いと思います。(とはいえ、洋服を着ていると左右差もわかりにくく、思春期のお子様にそのような観察することは、ご家庭内でも遠慮してしまうという現状もありますが。)

学校検診で「受診要」となればもちろんですが、ご家庭の中でも時々上記のチェックをしていただき、側弯を疑うような所見があれば、時期を問わず当院をはじめ近隣の整形外科に受診していただければと考えています。繰り返しになりますが、大切なのは早期に側弯を発見し、その進行リスクを適切に評価し、その後の治療を計画することです。気になることがございましたら、いつでもご相談下さい。


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