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整形外科

腰部脊柱管狭窄症とは


村山医療センター 谷戸 祥之

腰部脊柱管狭窄とは年齢的な変化にともなって腰椎部で神経が圧迫される疾患です。50歳台後半から80~90歳まで出現します。典型的な症状としてあげられるのは間欠性跛行と膀胱直腸障害です。臨床症状とMRIで診断は可能です。

脊髄とは脳から四肢などへ様々な命令を伝えるワイヤーの束の様なもの(神経軸索の束)ですが、これが脊椎(背骨)の腰の部分で圧迫を受けて、下肢のしびれなどを起こしている病態を腰部脊柱管狭窄症と呼びます。正式には腰の部分の脊髄は馬尾と呼ばれていますが、馬尾やその枝の通り道(脊柱管)が狭くなっているために、馬尾やその枝が周囲から圧迫を受けている、という病態です。

腰部脊柱管狭窄症の症状

腰部脊柱管狭窄症の最も典型的な症状は、歩いていると下肢のしびれや痛みが出て来るために長い距離を続けて歩くことが出来ないというものです。前かがみになって少し休むと再び歩ける様になるのが特徴です。安静にしていれば特に症状はありません。歩き始めも問題ありません。しかし5分とか10分とか歩いていると足に痛みやしびれが出現します。数分休むことで症状は軽快しますが、また同じくらい歩くと休むという繰り返しになります。これを間歇性跛行(かんけつせいはこう)と呼びます。患者さんは次第に外出を控えるようになってしまいます。この状態が長期に続くと、筋力は衰え、骨粗鬆症を併発してしまいます。自転車に乗ったりする分には問題なく、シルバーカーや買い物かごを押しながら前かがみになって歩いたりする分には、より長い距離を歩けるというのも特徴です。狭窄の程度や場所によっては、じっとしている時から下肢の痛みやしびれを伴う場合もありますが、腰痛はあまりない場合も多いというのも特徴です。

膀胱直腸障害

腰部脊柱管狭窄症の症状のひとつに膀胱直腸障害があります。頻尿、残尿感、開始遅延といった症状があげられます。こういった症状が出現してきたら保存的治療では限界があります。早期に手術的に治療しないと、治らなくなってしまいます。
男性では鑑別診断として前立腺肥大があげられます。

腰部脊柱管狭窄症の診察

前屈みと後ろそらしのどちらで痛みを感じるかとか、横に曲げることで脚に痛みが走らないかとか、足の筋力に右と左で差がないかなどを診察します。

脊柱管狭窄症の検査

診断にはMRIという検査が有用です。MRIは磁気を用いて行う検査で放射線を用いないため、体への被曝は全くありません。下肢の血行障害などでも腰部脊柱管狭窄症と似たような症状がおこり得ますので、われわれはMRI以外にも様々な検査を組み合わせた上で、総合的に判断して症状の原因となっている病態を診断します。

腰部脊柱管狭窄症の治療

治療としては、狭窄の程度や場所などにもよりますが、まずは手術以外の治療を試み、それでも改善が乏しい場合には手術を行うという順番になります。馬尾やその枝の部分の炎症や血行障害が症状につながっている場合も多いため、手術以外の治療として、まずは消炎鎮痛剤の経口投与、血流改善薬の経口または点滴投与などを行うのが一般的です。これらの治療でも改善が乏しく患者さんが手術を希望された場合や、症状が進行していて下肢の運動麻痺(筋力低下)や排尿障害などが認められる際には手術を行います。

腰部脊柱管狭窄症の治療

腰部脊柱管狭窄症の手術治療は大きく二つに別けられます。神経の圧迫だけであれば圧迫部を除去する椎弓切除術が適応されます。腰椎に不安定性があれば圧迫を除去するだけでなく、脊椎固定術が必要となります。手術法の詳細については様々ですが、筋肉をできうる限り傷つけることなく、術後の痛みの少ない手術が現在の主流です(片側侵入両側除圧、内視鏡手術、CBT法など)。多くの患者さんが術後1~2週間で退院となります(術前の症状の重症度によって期間は異なります)。



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