子供の側弯症について
側弯症とは
側弯症とは背骨がさまざまな原因で弯曲してしまう病気で、脊柱が回旋を伴って10度以上側方に弯曲している状態をさします。側弯症には、先天的な側弯症もありますが、多くは原因が特定できない特発性の側弯症に分類されます。特発性側弯症は発症年齢によりわけられ、そのうち最も発症頻度が高いのが、10歳以降に発症・進行する思春期特発性側弯症で、全世界で人口の約2%にみられる疾患です。日本人でも約2%に見られ、学校保健法により側弯の学校検診が義務付けられています。
症状と経過
側弯それ自体が痛みや神経麻痺などの症状を呈することは通常ありません。しかし、他の先天的な病気や、側弯の進行による背骨の変性により、症状が出てくることがあります。
側弯症にはカーブが進行するものとしないものとがありますが、進行を予測することは難しく、年齢や弯曲の型などを参照に治療方針を決定します。一般的には年齢が若く、成長期や女子では初潮前に見つかった場合、進行しやすいと考えられています。側弯が重症化すると、肺の障害により呼吸がしづらくなってしまうため、多くの場合手術が必要となります。
診断
側弯症の正確な診断にはレントゲン検査が必要ですが、ご自宅でも簡単な方法で側弯症を疑うことができます(図1)。
立位検査(図1左)
後ろ向きにまっすぐ立った、気をつけの姿勢で行います。
①肩の高さに左右差があるかどうか。
②肩甲骨の高さと突出の程度に左右差があるかどうか。
③ウエストライン(腰の脇線)が左右非対称であるかどうか。
前屈検査(図1右)
両方の手のひらを合わせ、肩の力を抜いて両腕を自然に垂らし、膝を伸ばしたままでゆっくりおじぎをさせます。肋骨や腰に左右のいずれかにもりあがりがあり、左右の高さに差があるかどうか。
図1 側弯症の診察ポイント 日本側弯症学会編集、側弯のしおり『知っておきたい脊柱側弯症』より引用
治療方法
治療は、側弯の角度と年齢、骨の成熟度により総合的に決められます。運動療法、マッサージや整体・カイロプラクテイスには矯正効果はなく、その有効性は科学的に確認されていません。
① 経過観察
軽度の側弯では、3~6ヵ月ごとにX線撮影と定期診察をおこないます。
② 装具治療
軽度から中等度の側弯に対しては、側弯の進行防止のために装具を使った治療が行われます。装具療法の目的はあくまでも側弯の進行防止であり、まっすぐな正常な状態に戻すことではありません。手術に至らせないことが一番の目的です。一般的に成長期が終了したら装具を除去します。
③ 手術療法
側弯の進行が40~50度を超える場合や、装具治療が有効でなかった場合、手術が必要となります。手術では曲がった脊柱を矯正して、元に戻らないように固定する方法が行われます(図2)。
図2 側弯症の手術前後のX線写真(手術前(左)47度あった側弯カーブが、手術後(右)15度に改善している。)
手術による合併症には神経麻痺、感染症、呼吸器障害など、いろいろな合併症を生じる可能性がありますが、その頻度は決して高くありません。当院では神経麻痺を防ぐために、手術中に脊髄機能をモニタリングしながら安全に手術が行われるように対策をとっています。
また出血が多くなるため輸血が必要になりますが、手術前に患者さん自身の血液を貯めておき、手術中にも出血した血液を回収する自己血回収装置を用いて、できる限り患者さん自身の血液を輸血する方法をとっており、献血による血液製剤に頼らない工夫をしております。
手術方法により異なりますが、大半の方は手術後4日以内に歩行を開始し、約2~3週間で退院となり、その翌日から学校に通うことが可能です。
受診のタイミング
側弯症に対する診断および治療には専門的な知識や高度な技術、経験が必要となります。また、ご本人およびご家族の不安を取り除くために、継続的かつ充分なコミュニケーションが必要となります。
学校の検診で側弯症を指摘された場合、体幹の変形をご本人またはご家族が気付かれた場合、または体幹変形の治療でお困りの場合には、当院の側弯症外来にお越しください。
当院では小児および成人の側弯症をはじめ、様々な脊柱変形に対し多くの治療経験を持つ医師が診療を担当いたします。小児の側弯症の診療時間は、お子様の学校の授業に合わせて来院できるように、平日(毎週水曜日、毎週木曜日、毎週金曜日、および第1月曜日)の夕方や、夏休みや春休みなどの長期休暇にあわせて臨時の外来日を設けて診療にあたっております。詳しくは整形外科外来までお問い合わせください。