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コロナワクチン副反応調査レポート4 
-ワクチンにより誘導された抗体産生と、性、年齢、および実際に生じた副反応との関連について-


医局秘書アルーナの報告

コロナワクチン副反応調査レポート皆さまお疲れ様です。

 第1回第2回は当院先行接種を対象とした新型コロナワクチンの副反応について報告させていただきました。第3回はワクチンにより誘導された免疫反応(血液中の抗体産生)についてレポート致しました。ワクチン2回目の接種後は接種した職員全員(100%)が抗体陽性となり、ウイルスのスパイク蛋白に対する抗体価は新型コロナウイルスに感染した方々と同等あるいはそれ以上のレベルに上昇し、感染に対する抵抗性を示す中和活性値も同等以上に増強したことが分かりました。日本人においてもワクチンの効果は期待できるということですね。

 さて、ワクチン接種後、特に2回目の接種後は、39度の発熱や強い倦怠感が高頻度で出現しました。そんな時、「きっと抗体がいっぱい出来ているに違いない・・」と自分に言い聞かせていた職員も多かったようです。副反応が強ければ抗体産生も多くなる? 果たして本当なのでしょうか。今回は、ワクチンにより誘導された抗体産生と、性、年齢、および実際に生じた副反応との関連についてのレポートです。

コロナワクチン副反応調査レポート コロナワクチン副反応調査レポート

新型コロナワクチンの効果と副反応 
第4回ワワクチンの免疫学的効果 〜抗体産生と性・年齢・副反応との関連について〜

臨床研究部長 吉原愛雄
治験管理室 葛岡朋代 沼田成美 我妻亜由美 松下愛美
看護部(感染管理担当) 佐々木恭兵
国立感染症研究所 血液・安全性研究部 水上拓郎 野島清子 関洋平 濵口功

 当院で実施した副反応のアンケート調査では、「抗体価は他の人に比べて低いように感じる。」「副反応の強弱で検査値の結果も高低になるのか気になりました。」など、副反応と抗体産生を関連付けて捉える記載が散見されました。 第3回の報告では、ワクチンを2回接種することにより、ウイルスがヒトに感染する際に重要な役割を担うスパイク蛋白に対する抗体価(S抗体価)や、実際のウイルス感染に対する抵抗性を示す血清の中和活性値が新型コロナに感染した方々のレベル以上に上昇することを示しましたが、これらの免疫学的な反応はワクチン接種により生じた副反応と関連があったのでしょうか。 今回は、ワクチンにより誘導された免疫学的反応(抗体産生)と、性、年齢、そして副反応との関連を報告いたします。(「S抗体価」、「中和活性値」についての説明は第3回のレポートを参照してください)

 2回目のワクチン接種後にS抗体価および中和活性値の測定を実施した225人 (男性84人、女性141人)を対象としました。平均年齢は、男性 42.1歳、女性 40.6歳でした。以下の棒グラフは、いずれも幾何平均値と95%信頼区間を表しています。

1) 性・年齢とS抗体価および中和活性値との関連

 第2回のレポートで、当院では発熱の発現率には性差が無く、頭痛は男性より女性の頻度が高く、年齢との関係では発熱、倦怠感は中高年者より青壮年者に多いという結果を報告しました。 ワクチンによる免疫反応である、S抗体価および中和活性値も同様の傾向になるのでしょうか。

① 性差について

コロナワクチン副反応調査レポート

 女性は男性に比較してS抗体価は有意に高値を示しましたが、中和活性値には有意な性差は認められませんでした。(* : p<0.05, ns: 有意差なし)

② 年齢との関連について

コロナワクチン副反応調査レポート

 年齢との関連では、S抗体価、中和活性値は共に20歳台で高く、40歳台、50歳台以上で低い傾向を認め、20歳台と50歳台以上との間には有意差が認められました。(**: p<0.01, ns: 有意差なし)
 S抗体価、中和活性値の性差および年齢との関連は、副反応の発現の傾向に近似していることが分かりました。

2) 各副反応とS抗体価および中和活性値との関連

① 発熱との関連について

 37.5度以上の発熱を来した人は、発熱しなかった人に比較して、S抗体価、中和活性値はいずれも有意に高値を示しました。ワクチン接種後、高い熱が出た人は、産生された抗体の量も多いことが示唆されます。(*:p<0.05、***: p<0.001)

② 頭痛との関連について
 頭痛との関連について、中等度以上の頭痛(日常生活や仕事の一部に支障が生じる程度以上の頭痛)の有無で検討したところ、S抗体価および中和活性値との明らかな関連は認められませんでした。

③ 倦怠感との関連について

コロナワクチン副反応調査レポート

 倦怠感の強さを、軽度:日常生活に支障なし、中等度:日常生活・仕事の一部に支障あり、重度:日常生活・仕事に支障があり、寝込む、休む程度、と区分したところ、中等度以上の倦怠感を自覚した人のS抗体価および中和活性値は、自覚しなかった人に比較して有意に高値を示しました。(****: p<0.0001)

 倦怠感の程度と抗体産生との関連を詳細に検討すると、症状の強い人の方が、S抗体価および中和活性は有意に高い値を示すことが分かりました。(*: p<0.05、**: p<0.01、***: p<0.001)

④ 注射部位の疼痛腫脹との関連

コロナワクチン副反応調査レポート

 注射部位の中等度以上の疼痛腫脹(夜間にうずくなど、気になる程度の疼痛腫脹)の有無とS抗体価との明らかな関連は認めませんでしたが、中和活性値については中等度以上の疼痛腫脹を自覚した人が自覚しなかった人に比較して有意に高値を示しました。(*: p<0.05)

[まとめ]

・ 2回目のワクチン接種後、ウイルスのスパイク蛋白に対する抗体価(S抗体価)には性差が認められ、女性は男性に比較して有意に高値を示しました。年齢との関連では、S抗体価、中和活性値は加齢とともに低下する傾向を認め、20歳台で高値、50歳台以上では低値を示し、両者の間には有意差が認められました。これらは、ワクチン接種による副反応の発現頻度と近似した結果になりました。

・ ワクチンの副反応とワクチンにより誘導された抗体産生(S抗体価および中和活性値)との関連については、発熱(37.5度以上)の有無、中等度以上の倦怠感はS抗体価および中和活性値との有意な関連が認められ、中等度以上の注射部位の疼痛腫脹は中和活性値との間に有意差が認められました。特に倦怠感においては、症状の程度とS抗体価および中和活性値との有意な関連が認められ、倦怠感を強く自覚した人ほど抗体の産生は多くなることが示唆されました。

・ 以上の結果より、ワクチン接種後の全身的な副反応が強い場合、特に発熱や強い倦怠感が出現した場合、血液中のS抗体価の上昇や中和活性値の増強が期待できることが示唆されました。 倦怠感の強さはワクチンによる抗体産生、即ち免疫学的な効果の強さを示す指標になりうると考えられました。

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