独立行政法人 国立病院機構 村山医療センター

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トピック

脊髄損傷に対するヒトiPS細胞由来神経幹細胞移植の臨床治験が世界で初めて慶應義塾大学病院で実施されたことが発表されました

脊髄損傷に対するヒトiPS細胞由来神経幹細胞移植の臨床治験 向かって左から谷戸病院長(村山医療センター)、松本病院長、岡野教授、中村教授(1月14日記者会見)

脊髄損傷に対するヒトiPS細胞由来神経幹細胞移植の臨床治験記者会見後、中村教授、谷戸病院長、岡野教授

iPS細胞の臨床応用を目指した研究体制

 本研究では慶應義塾大学を中心として、大阪医療センター、大日本住友製薬が連携しています。京都大学iPS研究所(CiRA)から供給された臨床グレードのiPS細胞から誘導された神経幹細胞が脊髄損傷患者に移植されました。今後は、村山医療センターで引き続き移植後の有効性や安全性評価を含めた経過観察とリハビリテーションを継続いたします。脊髄損傷に対するヒトiPS細胞由来神経幹細胞移植の臨床治験 村山医療センター

iPS細胞治療とは?

 脊髄損傷、iPS細胞を用いた再生医療という言葉はこれまでもメディアにたびたび登場していますが、そもそも脊髄損傷とはどのような病気で、またiPS細胞治療はどの様なものでしょうか。

~脊髄損傷~
脊髄損傷とは外傷などにより脊椎(骨)に囲まれている脊髄(神経)が損傷することです。脊髄は脳と接続しており、脳幹を通じて脳から伝達された指令を手や足に伝達する役割や手や足の情報を脳に伝達する役割を持っています。
脊髄が損傷することでその伝達がうまく伝わらず、手足の運動、感覚の麻痺や自律神経障害が起こります。本邦でも約10万人以上の脊髄損傷患者がおり、毎年約4000-5000人の患者が新たに発生しています。近年では転倒などの軽微な外傷を契機に発症する高齢の脊髄損傷患者の増加が指摘されています。
集学的医療の進歩により重度の麻痺をかかえた脊髄損傷患者でもその生命予後は一般の方と変わらないようになってきました。しかしながら、有効な治療が存在しないため、リハビリテーションで、残存機能を活用することでADLの改善をはかるというのが現状の治療の限界でした。このような状況を打開するために、損傷した脊髄の再生をめざす研究がすすめられてきました。
長いあいだ「脊髄を含む成体哺乳類の中枢神経系は損傷を受けると二度と再生しない」と信じられてきましたが、近年の基礎研究の著しい進歩により中枢神経損傷でも適切な環境が整えは再生することが明らかになってきました。

~iPS細胞由来神経幹細胞~
Induced pluripotent stem cell (iPS細胞)は2006年に京都大学の山中伸弥教授らにより樹立された細胞で、成熟した体細胞に4つの初期化遺伝子(Oct4, Sox2, Klf4, c-Myc)を導入することで作成されます。体細胞が初期化(リプログラミング)されることで、神経や筋肉、臓器といった様々な細胞に分化する能力を持つ細胞(多能性幹細胞)です。脊髄損傷に対するヒトiPS細胞由来神経幹細胞移植の臨床治験 村山医療センター

 本研究でも、このiPS細胞を神経の元となる神経幹細胞(iPS細胞由来神経幹細胞)に誘導し、これを移植しています。これまで、マウスやサルの亜急性期脊髄損傷モデルに対するiPS細胞由来神経幹細胞移植はその治療効果が確認されており今後の臨床応用が期待されています。
今回の臨床治験の結果、つまり脊髄損傷患者に対するヒトiPS細胞移植の安全性や有効性の評価は世界中が注目しています。

 脊髄損傷は重症度が高く、本邦のような高齢化社会では患者数の増加の一途を辿っていますが、村山医療センターのように数多くの症例数を扱っている病院は全国でも数施設にとどまっています。
当院では、再生医療についても豊富な知識を持ったスタッフが多く、その治療の前後におけるリハビリテーションやその安全性や治療効果についても、当センターから情報発信を行うことで、iPS細胞を用いた脊髄損傷治療の実現に寄与したいと考えています。

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