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抗スパイク蛋白抗体価および中和抗体価を測定 -コロナワクチン調査レポート6-


医局秘書アルーナの報告

抗体値とは 抗体値レポート みなさん、こんにちは。

新型コロナウイルスの新しい変異株(オミクロン)の出現により、全世界的な感染拡大が進んでいます。我が国でも、落ち着いた年末からは想像できない速度で新規感染者数が増大してきました。オミクロンによる重症化率はこれまでの変異株に比較して低いと報告されていますが、感染者の絶対数が増えれば必ず重症者数も増えることは必至であり、より厳密な感染予防対策が必要になります。感染予防の鍵を握るのは、マスク・手洗い・3密の回避を軸とした生活上の予防に加え、ワクチン接種が重要と考えられます。厚生労働省では、昨年11月11日にファイザー社の「コミナティー筋注」の3回目接種(追加免疫)を特例承認し、さらに同年12月16日には武田薬品工業の「COVID-19ワクチンモデルナ筋注」の追加免疫が特例承認されました。各自治体の協力のもと、昨年12月1日から最終接種後8か月を経過した医療従事者を中心に3回目のワクチン接種が開始になりました。

抗スパイク蛋白抗体価および中和抗体価の測定を実施

村山医療センターは、昨年のワクチン接種開始にあたり、副反応の調査を実施する先行接種施設に選定されたため、多くの職員が昨年2月から3月にかけて先行的にワクチン接種を受けました。その際、希望者を募り、ワクチンによる免疫学的効果の検査を行い当院ホームページでその結果を紹介させていただきました。今回、3回目のワクチン接種にあたり、同様の血液検査の実施に同意した職員に対して血液検査を行い、抗スパイク蛋白抗体価および中和抗体価の測定を実施した所、極めて興味深い結果が得られました。なお、検査の一部(中和抗体価の測定)は特別な実験室で実際のウイルスを用いて行うもので、国立感染症研究所との共同研究により実現した貴重な測定値になります。(検査内容の詳細は、「新型コロナワクチンの効果と副反応レポート3新型コロナワクチンの効果と副反応レポート4」を参照してください。)

3回目ワクチン接種(追加免疫)の免疫学的効果について

臨床研究部長 吉原愛雄
治験管理室 葛岡朋代、沼田成美、我妻亜由美
看護部   佐々木恭兵、前田奈穂美
国立感染症研究所 血液・安全性研究  水上拓郎、関洋平、野島清子、濵口功

1. 抗スパイク蛋白抗体価(S抗体価)の推移
新型コロナウイルスが標的細胞に進入する際に重要な役割を示すと言われるスパイク蛋白に対する抗体価(S抗体価)の結果を示します。多くのコロナウイルスワクチンは、このスパイク蛋白に対する免疫を作らせることを目的としており、S抗体価はワクチンの効果を示す直接の指標の一つと考えられます。

下記に、S抗体価の結果を示しました。対象は、医療従事者 219人(平均年齢41.3歳)です。棒グラフは幾何平均値を、バーは95%信頼区域を示します。ワクチン接種前のS抗体価は通常陰性(0.8 U/mL以下)ですが、1回目のワクチンの接種後はほとんどの方のS抗体が陽性になります(図では見にくくなりましたが、幾何平均値は42.0 U/mLでした)。その後、2回目のワクチンを接種するとS抗体価は著しく上昇し(2144 U/mL)、1回目の値の約50倍になりました。

次に、今回、3回目ワクチンの結果です。3回目接種前、即ち2回目接種後から8か月経過した時点のS抗体価は、2回目接種後の値の1/5程度に減少していることが分かりました(443 U/mL)。もちろん、それでも1回目接種後よりも10倍高い値であり、新型コロナに対する免疫は残っていると思われます。しかし、抗体価が1/5程度に下がってしまうと、変異株に対する予防効果は気になるところとなります。一方、3回目のワクチン接種後を調べると、S抗体価は著しい上昇を認め(22980 U/mL)、3回目接種前の値に比較して約50倍、2回目接種直後の値に比較しても10倍高い値となりました。

2. 中和抗体価の推移
中和抗体価とは、ウイルスによる細胞障害(CPE:細胞変性効果)を実際に阻止できる強さを示します。採取した血清から様々な希釈倍率の検体を作成し、細胞障害を阻止できる最も大きい血清の希釈倍率を中和抗体価とします。即ち、中和抗体価が「40倍」という場合は、血清を40倍希釈したものでもウイルスによる細胞障害を阻止する能力を有していたという意味になります。

中和抗体価の結果を示します。中和抗体価もS抗体価と同様、ワクチン2回目の接種後(83.0倍)は1回目接種後(4.20倍)の約20倍に上昇しましたが、その後8か月経過後は残念ながら約1/7に低下していました(11.3倍)。今回、3回目の追加接種により、中和抗体価も著しい上昇(318倍)を認めることが明らかになりました。3回目接種前の値の約25倍、2回目接種直後の値と比較しても3.8倍高い値となりました。

抗体値とは 抗体値レポート

3. 考察
海外の報告では、ファイザー社製のワクチンの3回目接種により中和抗体価は接種前83から接種後1754と約20倍の上昇を認め、2回目のワクチン接種後の値と比較しても、15倍高い値を示したと報告されています (Falsey AR. et al. New Eng.J.Med 2021)。今回、当院の医療従事者の結果もほぼ同等の結果が認められ、3回目のワクチン接種の日本人に対する有効性が強く期待できることが示唆されます。

厚生労働省のホームページでは、順天堂大学による「ファイザー社ワクチン初回接種者に対するファイザー社ワクチン3回目接種後中間報告」が提示されています。腋窩痛、リンパ節腫脹については2回目接種後よりも3回目接種後の方が高いとされていますが、副反応の状況は2回目接種後とほぼ類似していたとまとめられています。とはいえ、アナフィラキシーショックなどの重篤な副反応の可能性が否定されているわけではありません。期待できる効果と副反応のリスクを正確に判断し、3回目接種を検討していかれることが望ましいと思います。

4抗体値とは 抗体値レポート. 結語   
3回目のワクチン接種により抗体価の顕著な上昇が認められることが明らかになりました。3回目の接種は、日本人に対しても有効性が期待できると考えられます。

 

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